サヨナラのしずく
それから一月たったけど、母親の苦しんでいる姿しか見られなかった。



まともに会話もできないけど、それでもいい。



ただ、最後だけは看取りたいと思う。



おばあちゃんもタクミさんも看取れなかったから、母親だけは看取りたい。





あたしは病室を出た。



すると、そこに俊平が立っていた。




「悪い。こんなとこまで来て」




驚きすぎて何も言い返すことが出来ない。




「ちょっと話せるか?」


「えっ?」




話?何の話?



あたしは黙って俊平についていき、病院の庭のベンチに並んで腰をおろした。




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