糖度∞%の愛【改訂版】

こうやって今できている“結果”だけを知って、彼方みたいにそこまでの“過程”をちゃんと考えて思ってくれる人はそうそういない。だからこうやって、今までの当たり前のようにやらなくちゃいけなかった努力を、見破られたり褒められたりすることには慣れていない。褒めてくれるのは両親くらいだった。
そんな両親に匹敵するような、私への思いやりを、彼方は持っているのだ。
私のことを本当に理解しようとしてくれているから、当たり前のようにそう思ってくれる。

それが何よりうれしくて、それを感じるたびに、もっともっと彼方を好きになる。

ホント、毎日毎日彼方に恋をしているみたいだ。

それが恥ずかしくもあって、でも嬉しくもあって。……そしてやっぱり怖くもある。




「それはアンタ、すっごい幸せな悩みだわ」


私と彼方のことを知っている唯一の人物。そして彼方に私の病気のことを勝手に教えた彼女、藤城真帆が、綺麗にネイルされた爪を私に突きつけた。
それに一瞬たじろぎながらも、「でもさ」と口を尖らせる。


「今までが今までだったから。 これだけ続いたのも、こんなに好きになったのも、アイツが初めてで。……正直、どうしたらいいのかわからない」


恥を忍んでありのままの気持ちを言ったのに、真帆は取り合ってくれない。それどころか「恋愛初心者めっ!」と毒づきながら、私が少しだけ残してしまったお味噌汁に、何故かしょうゆをドバドバと注ぎだした。

もう飲まないから別にいいけど。もしそれを私がまだ飲むつもりだったとしたら、どんな嫌がらせだ。
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