糖度∞%の愛【改訂版】
そしてまた一人、私の容姿に惹かれた男が目の前にいる。
コイツは私の“秘密”を知っても、離れていかないのかな。
一緒に資料を探していたはずだった。
終業後、必要な書類があるけど資料室が乱雑すぎてどこにあるかわからない、と泣きつかれたのだ。それが必要な書類だと分かっていたし、資料室の悲惨さは周知の事実だったから、指導係としてそのお願いをきいてあげたのだ。
なのに、突然だ。
本当に何の前触れもなく、資料を探している途中で、“好きなんです。付き合ってください”と告白のお決まりともいえるセリフを言われてしまった。
まじまじとその相手を、改めて観察する。
あちこちにはねた黒髪。寝癖なんだかセットしたんだか、判断がつけれられない。その髪は、長いんだか短いんだかあいまいな長さだ。ツンツンとしているようで、ふわふわ揺れるその髪型は、見るたびに元気いっぱいの子犬を連想させる。
でも、その髪型に似合わず、顔はシャープな印象だ。人懐っこいというよりも、クールと形容したほうがしっくりくる顔立ちをしている。かけているノンフレームの眼鏡が、クールさをより印象付けるのかもしれない。
二重の涼しげな目元、整えられた眉。通った鼻筋に、血色のいい薄い唇。
子犬のような、クールに見えるような、アンバランスな印象。
けれど全然ちぐはぐになっていなくて、それが“五月女らしさ”だった。