ゴッドネス・ティア
「それで、………見えたの?」


「………見えた、といいますと?」



小さな影が頬杖をついたまま、ローゼリアンを見据えた。

その一瞬、…蝋燭が僅かに揺らいだ。
それは小さな影の全貌を微かに、しかし確かに映し出した。


ローゼリアンはまた笑みを深め、意地悪げに小さな影……否、小さな少年の頬を鋭い爪で突いた。

直ぐさま払いのけられたが、それをものともせず払われた手を上品に口元に寄せた。

骨張った、細く長く白い綺麗な指の先に存在する鋭い爪が蝋燭に照らされ、美しく艶を映えさせた。



「フフフッ…!解っていますよ…占星術の結果ですね…!フフフフフフフフフフフッ…やはり占星術は素晴らしいですよ…貴方にもいつかその素晴らしさが……まあ、そう怒らずに」



怒りのオーラを目に見えそうな程発してくる少年の睨みをものともせず、ローゼリアンは、愉快だ愉快だ、と楽しげに占星術の素晴らしさを想ってなのか不気味な笑いを浮かべていた。


感情表現なのか、手を振ったり高らかに笑い転げて喉の奥まで見せてきたり、……妙にオーバーで見ているこちら疲れてくる。
あちらは疲れないのだろうか。



「それより……結果は見えたんでしょ?……早く…急いでるんだ…」



焦らしているのかどうなのか、前フリが長ったらしく待ちきれない。

苛々と机の面を爪で叩きながら貧乏揺すりをする少年。
それをにこやかとは言えないニヤニヤ笑みで眺めて「案外気の短いお方なんですねぇ」と更に煽るようなことを発言したが、…そこは無視だ。無視無視。無視が一番。




興奮が落ち着いたのか、しばらくするとやっと一息ついて口を開いた。






「……そうですねぇ……………影を見ました…」


「………影?」



……影?…影とは?

聞き慣れない単語に少年は小さく首を傾げた。

ローゼリアンは始終笑みを浮かべて、「影とはですねぇ…」と再び口を開いた。

















「……影は影。そう、影なんですよねぇ。……水晶にはたくさんの黒い…薄暗い影が見られました。………おそらく貴方方の敵になる輩共ではないかと思われますねぇ…」


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