ゴッドネス・ティア
広間を飛び出し、その女性のもとへ駆け抜ける。


馬車にも劣らない速さで…と言えるわけではないが、村では中々速かった走りで馬車よりも速く女性のもとつき、彼女の腕を掴み、自分の方に引き寄せた。



「きゃっ!」


「おい、危ねーぞ!
のろのろ歩いてんじゃねぇよ!」



馬車の主だと思われる怒声が馬車から自分達へ投げ掛けられた。

そして馬車は何事もなかったかのように砂埃を巻き上げ、轟音を響かせながら去って行った。



「いってぇ…、クソッ、
危ねぇのはどっちだってーの…」



馬車を避けたせいで地面に思いきり背中から打ち身をした。

そのせいで背中を重心的に体のあちこちがズキズキと痛む。



「あ、あの…」



か細い声が耳元で聞こえた。


―――あ、そうか……危機一髪。



「あ、大丈夫か?
怪我はしてないか?」


「あ、はい!
ありがとうございました!」



そう言って、女性は申し訳なさそうに頭を下げた。

年齢は20代前半くらいの、細身のきれいとかわいいを足して二で割ったような女性だ。

美人でまブスでもない、ちょうどいいかんじの素朴感溢れる人。



「や、別に。
怪我なくてよかったよ」



重い体を起こし、立ち上がる。

顔を上げるとパタパタと足音をたてながら走ってくるヒサノとアランが見えた。

血相を変えて具合が悪そう。



「レレレ、レ、レオナ!
大丈夫ですか!?
生きてますかぁ?!」


「レオナ、大丈夫…!?」



こちらも心配そうに見上げてくる。


―――フフ、そんなに俺が好きか?


……と、いうのは冗談で。



「おう、大丈夫。
ちょっと打ち身したくらい」


「そう、よかったです…。
こちらは…?」



胸を撫で下ろすと、女性に気付いたように首を傾げる。


女性はハッとして頭を下げた。



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