ゴッドネス・ティア
「なぁーんで俺がこんなカッコしなきゃなんねぇんだよ!」



顔を真っ赤にして怒鳴った。


声が男なのでオカマにも見える。



「だぁーって、お金が無かったんですもの、誰かさんのせいで!
文句があるなら服貸し屋に言って下さい!」



ヒサノは腰に手をあててフンッと鼻を鳴らした。


ちなみにヒサノは、先日盗んだメイド服を改造して着ている。


髪は耳がばれるのでそのままだ。



「俺は葬式の伯爵婦人か!」



邪魔な裾を少しめくって揺らす。



「でも…似合ってますよ、レオナさん。
私よりきれいです…」



「…そんなこと言われても嬉しくない…。」


アンに真顔で言われ、ガクッとレオナはうなだれた。


そんなレオナの肩にアランが、元気出せよ、というかんじに手をおく。



「レオナ、大丈夫!
本当にきれいだから、ナンパされるかもよ!!」



眩しい程の満面の笑みでグッと指をたてた。



「てめぇ………っ」



コンコンッ



部屋のドアがテンポよくノックされた。



「あ、はい、どーぞ」



アンがドアを向き、返事をすると、式の役員みたいな礼服の男性が顔を出した。



「あの…、もう少しで式が始まるのでお客様は席へお戻り下さい」



「あ、そうなんですか。
では、アンさん、また後で」



三人は役員に背中を押されて、部屋を出た。



「あちらが式場となります」



役員は一際大きな扉を手で示し、去って行った。



「じゃ、行くか」



「はい」



レオナは顔を引き攣らせながら扉の取っ手に手をかける。


開く前にもう一度自分の姿見下ろした。


重い溜息が漏れる。



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