i f~小さな街の物語~

第3話「新しい仲間たち」



教室から出ると、廊下には卓也の姿があった。



卓也は4人のグループで
楽しそうに話をいている。



周りの連中は知らない顔ばかり。



「お、翔終わったか~!」


卓也は他の3人を連れて
俺の元へ嬉しそうに駆け寄ってきた。


「こいつらマジで面白いぜ~!紹介するね。
この小さくてマッチョなのが太一。
それからイケメンの竜也。
ちょっと真面目そうなメガネの大和。
みんなK小学校なんだってさ~。
皆、こいつが俺の大親友の翔。
仲良くしてやって!!」



卓也は嬉しそうにみんなの紹介をしてくれた。



俺達はぎこちない感じだったけど
それぞれ言葉を交わしていった。



「木村翔だよ。よろしく!」


「俺は太一(たいち)!
翔くん、野球部一緒に入らない?!」


真っ先に自己紹介を始めた太一は
初対面とは思えないほどの勢いと馴れ馴れしさで俺を野球部に誘った。


基本的には俺の苦手なタイプなんだけど

太一には人懐こさがあり
卓也と同じ雰囲気を少し感じる
憎めない少年だった。

「いや、野球はちょっと。。。」

「そっかそっか!気が向いたら入ろうね!」

「う、うん。わかったよ。」



太一の明るさとキャラクターに

少し笑みをこぼした俺を見て
イケメンの竜也が続けて声を掛けてくる。

「翔くん、よろしく。
竜也(たつや)って呼んで。」

竜也は中学1年生にして
身長170センチを超えており

スラっとした体系で、髪もサラサラ。
キレイにセットもしている。



自分が他人にどう映るのかを
よく知っているような印象を受けた。

ただ、彼も嫌味がない。
素直に俺に笑顔を向けてくれた。



(こいつもモテそうだな。
卓也とは違うタイプだけど。)


「竜也ね。よろしく。」


かっこいいね。とか、身長高いね。とか
言いたっかたけど

面倒くさくなってやめた。







最後に俺に声を掛けてきたのは
頼りなさそうな少年。



「大和(やまと)だよ、よろしくね。
仲良くしようね!」


大和はメガネをかけていて
卓也が言っていた通り真面目そうだった。


「よろしくね。大和!」


挨拶程度の会話だったけど
3人に悪い印象は受けなかった。



何より、卓也が一緒にいることを選んだ連中。間違いはないと俺は確信していた。







「じゃあ明日から頑張ろうな~!」

卓也の一言でみんなは帰路につく。






そんな中。


「翔くん、家どこなの?」


声を掛けてきたのは、メガネの大和。


意外な人物から話かけられ
少し戸惑ったけれど、俺は会話を続けた。


「K団地だけど。。大和は?」


「本当に?!
僕も同じ方向!一緒に帰らない?」


「お~、いいよ!帰ろう帰ろう!」


クラスで誰とも会話をしなかったせいか

今日会ったばかりの大和に誘われたことが
素直に嬉しかった。


そう。

突っ張っていても
結局は俺もひとりぼっちが嫌だったんだ。












帰り道

大和は想像以上に話題作りをしてくれた。


「翔くんは何の部活入るの?」


「うーん、ぶっちゃけ部活も面倒くさいんだよね。
でも、うちの中学って部活強制じゃん?
どうしようかなって。大和はどうすんの?」



これは後で気付いたことだけど

大和に対して
俺は自分の考えを素直に話すことが出来ていて
彼といると何だか凄く居心地が良かった。



大和にはそんな魅力があった。





二人の会話は自然と弾む。





「そうなんだ!僕は美術部にしようかなって。運動だめだし。。」


「ふ~ん。でも美術部って感じする!いいと思うよ。
まぁ俺は絵とか全然だめだから適当に運動部入ろうかなって。
太一は野球だろ?竜也はどうすんのかな?」


「そうだよね!翔くんも頑張ってね。
竜也は昔からテニスだよ。
小学校のときに全国大会にも出場したんだ!
本当に凄いよ、竜也は。
卓也くんはどうするのかな?」


「ふ~ん、卓也はサッカーだよ。
あいつも小学校からエースでさ。
なんかあいつらキャラ違うけどすげーよな。」



話の内容は、大したことのない会話だったけど

大和とは
これからも仲良く出来そうな気がして
それだけで満足だった。



「なんか大和は話やすいわ。
あ、もう着いちゃったね。
んじゃあまた明日な!バイバイ。」



「うん!これからよろしくね!バイバイ!」



自分でも気持ち悪いと感じるほど
ニヤついた顔で、俺は帰宅した。



第3話

「新しい仲間たち」~完~

第4話

「家族」へ続く

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