Hair cuts
浩人はもう昔の浩人じゃありません。そして、あたしや、遊里も…。だからさくら。どうか、さくらだけは昔のままでいてください。さくらだけは変わらないで…。


愛華のノート、いや、手紙にはそう記されていた。でも、一番初めに変わったのは私だった。私が、誰よりも早く「hair cuts」のメンバーでいることをやめたのだ。私は、他の三人に比べて現実的だったのだと思う。現実を見つめたとき、彼らとの温度差を感じた。と、同時に、彼らの純粋さを疎ましく思った。
ずっと一緒なんてありえない。

私以外のみんなは、とても純粋だった。永遠の絆を信じていただけで、悪気なんか勿論かった。とても素直で、真っ直ぐな気持ちで仲間を愛していたのだろう。
なのに、私は…。

気付いた時、私は携帯電話を手にその番号を探していた。もう二度とかけることがないと高を括りながら、電話帳から消す事のできなかった名前。画面に、「平田遊里」の文字を見つけた時、私の胸は緊張と、甘酸っぱい感傷で押しつぶされそうになった。愛華の結婚式で別れてから、実に七年の歳月が流れている。もしかしたら番号が変わっているかもしれないと思ったが、意外なほどあっさりと、電話は繋がった。時刻は朝の六時。別れた恋人に電話するには非常識な時間帯であるとは知っていたが、どうしても話をしたかった。
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