これが、私の普通
階段を降りると、そこには父親が立っていた。

拳を握り締め、玄関を睨みつけている。

玄関からは、玄関を叩くドンドン!という音と、泣き叫ぶかのような母親の悲鳴が聞こえた。

母親は外に追い出されたんだと気付いた時には、父親は私を睨みつけていた。


その時の父親の目付きは、今でも忘れる事のできないものだった。

それは、殺意すら感じる程の「死んだ目」で、私を睨み付けていたからだ。

何も言葉を発せず、ただただ、私を睨み付けていた。


あの夜から、私は変わった…。



もう何も聴きたくない。
寝なきゃ寝なきゃと思えば思う程、眠気は遠ざかっていった。

母親が
「早く寝なさいよ」
と声を掛けてくれてはいたが、少しずつ少しずつ、2階に上がる時間が遅くなり、とうとう私が起きている時間に父親が帰宅したのだ。

「ただいま」の声はなく、ゆっくりゆっくり台所に向かう父親。

私がまだ起きている事に気付くと、近寄ってきては、
「なんだ!早く寝ろ!」
と言いながら、座っている私の背中を何度も蹴ってきた。

とても痛かった。
信じられなかった。
なぜ…ただ起きているだけで、蹴られなければいけないのか…。
何度も…何度も…。
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