これが、私の普通
3人家族
幼い私に母親は、
「お父さんは単身赴任してるからね、少しの間帰ってこれないのよ」
と、言い聞かせてくれた。

蒸発という言葉も、単身赴任という言葉も知らなかった私は、ただ父親は少しの間帰ってこないんだと、そう思っていた。


父親が居なくなってからも、私の中の父親は消えず、眠れない毎晩を過ごしていた。

体調不良になったり、食欲不信になったり、体への影響は、自ずと表れてきていた。

病院に行っても、ただの風邪と診断されたり、学校に慣れないのでは?といった理由で、簡単な薬程度しか処方してもらわなかった。

原因は父親だと、言えれば良かったのだが、言えなかった。
言ってはいけないんだと、思っていた。

それでも恐怖心からくる不眠症は、時に治まり、早い時間に寝れる事もあった。

しかし波があったのは事実だ。


食事中などにグラスが落ちて割れた時の音に反応して、また不眠症は再発していった。



体育祭など、父親参加の種目には母親が参加したり、まわりとの「違い」を認識するのはそう遅くなかった。

「うちはみんなと違うんだ」と思い始めてから、徐々に心に蓋をするようになり、みんなと家族の話をするのを嫌った。
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