ハッピー☆ウエディング
「葵、飲み物とって」
慶介は運転しながらあたしの方へ手を差し出した。
「あっはい」
あたしは急いでジュースホルダーに置かれていたペットボトルを慶介に手渡した。
―――今、あたしの事『葵』って言った・・・
なんか、ほんとの恋人同士みたい・・・
「・・・い・・・・葵?」
「はっはい!!」
あたしは我に返り、慶介を見上げた。
「・・・・・・俺今運転してるから、フタとってくれないか」
「あ、そか。ごめんなさい」
いけない、いけない。
あたしの悪い癖。人の話そっちのけで自分の世界に入っちゃうの。
車は、駐車場にきっちり入れられた。
あたし達は車を降りると、入り口に向かった。
チケット売り場で、財布をゴソゴソ探していたあたしに慶介は、
「ここで待ってて」
と言って、素早く券を買って来てくれた。
「ありがとうございます・・・あの、お金・・・」
慌ててチケット代を出そうとすると、慶介はあたしの手を遮って眉を下げて笑った。
「俺に恥じかかせる気?」
そして、彼はさっさと入場口に行ってしまった。
わわわ。
これが、大人の男の人なんだ。
今まで間違いなく割り勘だったから、すごく新鮮でなんだかくすぐったかった。
「ま・・・待ってぇ!」
その後をあたしは小走りで駆け寄った。