ハッピー☆ウエディング


脳の奥を刺激する甘い香りと、ほんの少しほろ苦い香りがあたしを包んだ。

後ろから抱えられるように、すっぽりと慶介の腕の中におさまってしまったあたしは、なるべく怒った表情をして慶介を見上げた。

慶介は、片目を少し開けるとあたしを見た。



「・・・大丈夫だって・・・あと1時間は余裕あるよ」


「でも・・・慶介・・・今日は絵梨ちゃんと瑛太の・・・」



そう言いかけたあたしの唇は慶介によって塞がれてしまった。



「ちょッ・・・」



少し体をよじって抵抗してみる。
でも、それが本心からじゃないのは慶介にはお見通しで・・・
ほんの少し顔を離すと、熱っぽい瞳であたしを覗き込んだ。



「・・・まだいいよ」


「・・・・・ん・・・」



甘く・・・甘くキスをする慶介。



あたしにとって、慶介のその目は魔法。






ま・・・いっか。





そんなふうに思えて、慶介のキスに身を任せていく。

慶介は時々こうしてあたしを求めてくれる。

愛おしそうに目を細めて・・・

大事にあたしに触れてくれる。





もう・・・どうにかなっちゃうよ・・・・・



「・・・・・・慶介・・・」



甘い溜息と共にそう囁いた瞬間―――


< 329 / 337 >

この作品をシェア

pagetop