ハッピー☆ウエディング
男の顔がみるみる蒼くなっていくのがわかる。
「あ・・・一ノ瀬先輩・・・」
いつからここにいたんだろう。
あたし達のすぐ後ろに慶介が立っていた。
慶介は、男の腕を掴んだまま、さらにあたしから引き離した。
「こういう事はあまり感心しないな」
「あの、これは・・・その・・・・」
慶介の声は、冷たく軽蔑していた。
あたしは、ホッとしたのと同時に見られてしまったことの罪悪感にさいなまれた。
「行きなさい。」
「は・・・・・はい・・・・失礼します」
慶介の言葉に、男は慌ててきた道を戻って行ってしまった。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
慶介は男が走り去った方を見つめたままだ。
あたしはその背中を見つめたまま思わずギュッと抱き締めたい感情に襲われた。
でも、慶介の雰囲気からそれは、無理な事だとわかる。
「あ・・・・あの・・・・・ありがとうございました」
あたしは思い切って慶介に声をかけた。
「・・・・・・ったく・・・・」
え?
なにか、ぼそぼそと言っているけどあたしの耳にはそれははっきり聞き取れなかった。