LOVERS♥HOLICK~年下ワンコと恋をして
「悪かったな。早く行ってやれよ。

 確かに、

 お前の素晴らしい彼氏はキャンキャン吼えて、

 フロントで騒いでたな。」

「キャンキャンて……」

「はは、ロビーで待ってるよ。」

そうよ彗が待っているんだ

こんなのに構ってられない。

コートを掴むと陽向が開けてくれたドアから、

部屋を飛び出した。


「高木様!」


追いかけてくる彼女に呼ぶ声に振り向いた

「携帯、取り上げてしまってごめんなさい。」

「あ、ああ。」

立ち止まっていると、

陽向が彼女に手から携帯を受け取り、

「受け取れ!」

「えっ!」


私に向かって放り投げた。

慌てて手を伸ばしてかろうじて受け止めた。


「ばかっ壊れたらどうしてくれんのよ。

 あ……」

ポンっと投げられたそれは、ブランド物のポーチに入っていて、

落ちたとしても壊れない感じだったけど

「よかったら使ってください。」

彼女はニコッと笑った。

エレベータを待ちながら、ポーチを開くと

携帯とカードが一枚。


いつの間にかこんな用意を?

はじめからそのつもりだったのだろう。

『ごめんなさい』と一言添えられていた。

悪い子ではないのよね。

こんなことするなんて切羽詰まってたんだろうな、

だからってやっていいということではないけれど。








 
< 101 / 272 >

この作品をシェア

pagetop