LOVERS♥HOLICK~年下ワンコと恋をして
「あの、

 あなたは、俺をどんな気持ちで生んだんですか?」


「え?」


「さっきの話だと親父が生んでほしいって言ったからって……」

「うん、そうね。

 産んでみたかったからかな?」


「みたかった?」

「あの頃、何もかもうまくいかなかった。

 そんな時、あの人に会ったの。

 零斗に。

 知り合いのスタイリストのお手伝いしてレイの撮影に立ち会ったの。

 レイはキラキラしてて、

 傍にいるだけで自分まで輝いてるみたいだった。

 彼はなぜか私をひどく気に入ってくれてね。

 すぐに付き合い始めたわ。 

 当時スターだったレイに思われてて自分は特別な人間になれた気がしたわ。

 彼に会ってから色んな事が好転し始めて、

 それまで駄目だったコンクールやコンテストで

 嘘みたいに認められるようになってね、

 ちょうどそんな時だったかな。あなたがお腹にいることに気がついたのは、

 彼のためにも、自分のためにも、

 あなたを生むことはできないと思って下ろそうとしたの、

 だけど、レイが

『産んでくれ』って、泣いて頼むから、

 産んでもいいのかなって、決心したの。

 幸せになれると思ったから、

 愛してくれるレイとお腹の子ども。

 だけどね……」


そう言ってしばらく押し黙ってから、

俺のことを見つめて、

大きくため息をついた。


「ごめんね。

 私はあなたより自分を輝かせることを選んだの。

 私は、自分のためにレイとあなたを捨てたの」

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