LOVERS♥HOLICK~年下ワンコと恋をして
「おめでとう彗。」

「彗、レイがついに腹をくくって、

 カミングアウトする気になったの。」


「まあ、ここまでの半生を語った本の出版披露をかねてな。」

「レイったら素直じゃないわね。」


柊の髪の花飾りをを整えながら

可笑しくてしょうがないっていう様子で、

俺の母親が笑う。

「まあ、その、俺も歳をとった。

 もう大して話題にもならんだろうがな」

フンと鼻を鳴らした。


「つまりみんなで俺をだまして?」


「はははっ

 ここに来る時点で、騙されてたんだってことに、気がつかないお前が悪い。」

それを親父に言われるとかすごい腹立つ。


大体こうなった原因はあんたらじゃないか。


「ったく、どこまで俺をおちょくれば気が済むんだ~」

「素直じゃないのは親父譲り~」

笑いながら俺の頭をペシンと叩いた。

「だあッ、コブに響くっ!」

なんだなんだ、

なんかのホームドラマみたいで恥ずかしいシーンは?


「彗、よかったね。」


俺の方にそっと手を添えて、

目を潤ませながら

柊が、つぶやく。


よかった?

そうなのか?


「あなたが思っているより、

 あなたはずっと愛されてたのよ。」


「愛され……?」


その言葉は俺の中にこびりついていた錆を一気に払拭するようだった。

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