魅惑の果実
急いで体を洗い、髪を洗い、興奮する気持ちを抑える様に湯船に浸かった。


ふぅ〜……。


体が温まると何でこんなに癒されるんだろう。


それにしてもこの手……まさか骨にヒビとか入ってないよね?


ちゃんとグーパーできるし大丈夫だよね?


桐生さんも放っておけばそのうち良くなるって言ってたし……。


我が家よりもここにいる方が安心する。


いつからかな。


桐生さんの側が心地よくて、愛しくて堪らなくなったのは……。


昨日はムカつき過ぎて涙が止まらない私の話を根気良く聞いてくれた。


桐生さんにどうこうしてもらいたいわけじゃない。


ただ話を聞いて欲しかった。


抱きしめて欲しかった。


桐生さんのおかげで少しスッキリした。


大学の事、結婚の事、とにかく色んな事を今日は忘れよう。


明日からまた考えればいい。



「よし! そろそろ上がろっと!」



湯船から出ようとしたら、急に扉が開き固まってしまった。


え!?



「き、桐生さっ」

「大きな声を出すな」



手で口を塞がれ、私は頷いた。





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