魅惑の果実
着替えてリビングに行くと、桐生さんはソファーに腰掛け夜景を見ているようだった。


そっと近付くと目を閉じていた。


眠ってる?


忙しい人なのに、私のせいで余計疲れさせちゃったよね……。


桐生さんの足元に座り込み、寝顔を眺めた。



「ごめんなさい……」

「何がだ」

「え!? 起きてたの!?」



パチっと開いた目にビックリして、大きな声が出た。


あ、そうだ。



「パジャマ、ありがとう。 あの、この服って……」



誰かが着てたやつ?


誰かが置いてったやつ?


って聞きたかったけど、言葉が続かなかった。


肝心なところで私はヘタレ。


キャリーという高級ファッションブランドのもので、確か今私がきているのは新作だったと思う。


新作ということは最近女性がここに来てるって事だよね……。



「その服は姉が置いてった物だ。 まだ着ていないやつだから心配するな」

「お姉さん? 桐生さん兄妹いたの!?」

「あぁ、姉が一人な。 日本に帰ってくるとふらっと寄っては散らかして帰るんだ、あの人は」



なんだ……お姉さんか……。


良かった……。



「お前は本当に分かりやすいな」

「え?」

「手当てしてやるからこっちに来い」





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