君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
飛行機遅れないかな...。


「フッ...。それは無理があるだろ」


「えっ?」


えっ...。まっ、まさか私。


「声に出てたぞ?飛行機遅れないかなって」


「嘘!」


「本当」


はっ、恥ずかしい!!
そんな子供じみたこと、聞かれていたなんて...!

またしばらく会えないって言うのに、圭吾さんの顔が見えないわ。


そんな時、


「...本当、離れがたいな。いつも」


そう言うと圭吾さんは私の頭を引き寄せてくれた。


「そんな可愛いこと言うなよ」


「圭吾さん...」


ちょうど圭吾さんが乗る便の搭乗アナウンスが鳴り、その瞬間、一気に現実に引き戻される。


「あっ...圭吾さん、行かないと」


「あぁ...。そうだな」


圭吾さんの手はゆっくり離れていく。


先に立ち上がった圭吾さんに続いて私も立ち上がる。


「搭乗口までお見送りさせて下さい」


そう言うと圭吾さんは手を差し出してくれた。

その手を握りしめ、ゆっくりと搭乗口まで歩いて行く。


あと数メートル。そうしたらもう圭吾さんと離れなくちゃいけない。


また仕事に打ち込む日々に戻る。


そんなことばかり考えていると数メートルなんて、本当にあっという間だった。


「それじゃ、またな」


そう言って離される繋いでいた手。


「...はい。着いたら連絡下さいね」


いつもいつも離れる時は寂しい。
寂しいけど、最後くらいは笑顔で見送りたい。
だから私はいつもこうやって圭吾さんを笑顔で見送る。


「...圭吾さん?」


みんな次々と搭乗口を抜けていくのに、圭吾さんはなぜか向かおうとしなくて。ジッと私を見つめてくる。


「菜々子...そろそろ俺と一緒にならないか?」


圭吾さんの言葉と同時に響き渡るアナウンス。


「えっ...?すみません、聞こえませんでした。なんて言ったんですか?」


そう尋ねると圭吾さんは一瞬驚き、そしてすぐに笑い出した。


「けっ、圭吾さん?なんで笑うんですか?」


「いや。...ごめんなんでもない。...なんでもないよ。また今度会った時、ゆっくり、な?」


「...はい」


最後にまた圭吾さんは私の頭を撫でてくれて、そして


「またな」


そのまま搭乗口へと向かっていってしまった。


「圭吾さん...」


いつも帰る時は、今度はいつ来るって言わない。
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