君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
ここが会社だってことを忘れてしまいそうになる。

「…菜々子に触れていい男は、俺だけだろ?」

唇が触れそうなほどの至近距離でそう囁かれたら、理性なんてどこかにいってしまう。

「…ごめんなさい」

怒ってるって分かっている。だけどいつもとは違うキスにドキドキしてしまっている自分もいる。

「…本当、みっともねぇ」

そう言うと大きく息を吐き、またギュッと私を抱きしめる圭吾さん。

「…すまない、会社でこんなことして」

「いっ、いいえ!」

「…帰ったらちゃんと言わせて?俺の気持ち」

私を離し、困ったように笑う圭吾さんに胸が締め付けられる。

「あの…!…私もちゃんと話したいです。…自分の気持ち」

どんなことがあっても私は圭吾さんのことが好きだから。…例え本当に仕事を辞めてほしいって言われても、橘さんの言う通り副社長が私のことを好きだったとしても。

「…分かったよ。なるべく早く帰るから。家で待ってて」

「はい、分かりました」

ゆっくりと離れていくぬくもり。

「またな」

そう言うと圭吾さんは私のつむじにそっとキスを落とす。

「え…」

圭吾さんはそれ以上なにも言うことなく給湯室から出ていく。

「…びっくりした」

押さえてしまう頭にてっぺん。

圭吾さんにキスされたかと思うと熱くなってくる。

どうにか心臓を落ち着かせたいのに、なかなか収まってくれそうにない。

「…反則です、あれは」

普通にキスされるよりドキドキしてしまった。

それでもどうにか落ち着かせ、副社長と橘さんの待つ副社長室へと戻った。
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