君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
次の日、勤務中になぜか副社長が差し出してきたものは手鏡。


なんで手鏡?副社長のことだからなにか意味があるのかしら?

悶々とそんなことを考えながら手鏡を見つめてしまっていると


「自分の顔をよく見て」


「...自分の顔、ですか?」


いまだに意味が分からないまま、差し出された手鏡を受け取り写し出される自分の顔を見る。


「げっ」


そして思わず漏れてしまった声。

だって『げっ』とも言いたくなる。
朝しっかりと化粧でカバーしたはずなのにお昼休み前の今、鏡に写し出されたのは目の下にはっきりと見える隈。


「酷いでしょ?昼休み中にどうにかしてくるように。午後からお客様が来るしね」


「...はい。申し訳ありません」


何やってんだろ。昨日、副社長によくしてもらって、仕事頑張ろうって思ってたのに隈って...。
しかも副社長に言われるまで気付かなかったなんて、本当に最悪。
良かった。お客様の前でこんな姿をさらけ出さなくて。


「...昨日は晴れ晴れした顔をして帰って行ったって言うのに、どうした?」


「あっ...いえ。ちょっと夜眠れなくて」


「ふ~ん...」


なにか腑に落ちないと言ったように私をまじまじと見つめてくる副社長。


別に悪いことなんて何一つしていないのに、悪いことをしている気分に陥る。副社長にこうやって見つめられると。


「まぁ、プライベートはプライベートだからね。とにかく仕事には支障をきたさないようにね」


「...はい」


そう言うと副社長は自分の部屋へと戻って行った。
思わず溜め息が漏れる。


もーやだやだ。
よく考えればさ、なんで私がこんなに悩まなくちゃいけないのよ。
単純に考えちゃえばいいのよね!私は橘さんの友人!だから橘さんの味方!!
...それでいいのよね。


「よし!」


そう考えると自然と気持ちは軽くなる。


さっさと仕事して美味しいランチでも食べに行こう!


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「よ~櫻田!たまには一緒に飯食おうぜ」
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