君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
「トイレっ!!」

「あっ!ちょっと桜子!?」

そしてそのままトイレへと全力疾走。
菜々子が私を呼ぶ声が聞こえてきたけど、振り返るかよ!
誰もいない女子トイレに入り、鍵を閉めると同時に漏れてしまうのは、多きな溜息。

「…言えるかよ」

ポツリと漏れてしまう言葉。

確かに私は彼のことを『和也君』と呼んでいる。
だけどそれは彼と速く親密な関係になりたかったから。なのに彼は私のことを『五條さん』と呼ぶ。
そして、私の方がはるかに年下なのに敬語だし、どこかよそよそしいし。

「……本当の和也君を知りてぇのに、な」

何回か会ってもどこか彼は私との距離に、境界線を張っているように感じてしまう。
他人行儀で、あまり自分のことは多く語らなくて。いつも私が一方的に話すだけの関係。
きっと私が誘わないと、一気に終わってしまう関係なんだ。

だけど好きなものは好き。
このままなにもしないで終わりにするなんて嫌だ。

「オシャレなお店、か……」

さっきに菜々子の話を思い出す。

菜々子みたいな女だったら、そんな場所が似合うんだろうな。私なんかが行っても場違いにならないだろうか…?

トイレから出て、鏡に写る自分の姿を見る。
そこに映し出されているのは、なんの女子力も感じられない女が映しだされている。
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