君が好き。2～大好きな彼と結婚する方法～
「五條、あんな切り詰めんなよ」

「あ、はい」

突然頭をコツンとされ、振り向くとそこには先輩の姿があった。
そしてその先には、さっきの後輩の姿があり、わざとらしくこっちを何度も見ていやがる。

ったく……。
余計なことを言いやがって。

「五條、あまり焦ってもいいことなんてなにもないぞ？……大切なのは、今なんだから」

「……………は、い」

『大切なのは、今』
先輩のその言葉が、異様に胸に響いた。
それはまるで、仕事だけじゃなくて全てに共通するような言葉にも思えた。

「分かったらさっさと帰れ！」

「え……？」

そう言うと、なぜか先輩は玄関付近を指差す。

「可愛いお友達がお待ちだぞ？」

「可愛い友達……？」

可愛い友達と言われて思い浮かぶのは、ただ一人だけ。
先輩の言葉に、適当に片付け挨拶そのままに玄関へと急ぐ。
すると見えてきたのは、女らしいワンピースにミュールを履いた菜々子の後ろ姿。

やっぱり菜々子だ……。

さっきまではあんなに会いたくないって思っていたのに、いざ来ていると聞くと身体が勝手に動いていた。

「……菜々子」

その名前を呼ぶと、一瞬驚いたように身体が反応しながらも、すぐに振り向く菜々子。

「桜子！」

そしていつもと変わらない笑顔を見せた。
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