こんな能力(ちから)なんていらなかった
それは紫音が優羽を抱えて家にやって来た時のことだった。
優羽を宥め寝かしつけた時、そう奈々に告げていた。
「結局言った通りじゃないか……」
「あんたは私情挟みすぎなのよ」
奈々は呆れたように漏らす。
「いくら優羽が大事だからって、優羽の気持ち尊重しなければ嫌われるだけよ」
「……そんなこと分かってる」
分かってなさそうな流の様子に奈々はこっそり頭を抱えた時だった。
優羽の声の調子が変わったのは。
優羽の部屋から聞こえてくる泣き声は、先程までの荒々しさは無く、か細く誰かを求めるようなものだ。
発作だといち早く察した流は、素早く部屋から出ると真っ直ぐに優羽の部屋へと向かう。
優羽を心配するあまり、ノックもせずにドアを引いた流は息を呑む。
流の足元にいた優羽はまるで捨てられた仔猫のようにボロボロだった。
その軽い体を持ち上げ抱き締める。
今迄のように。
「もう大丈夫だ……」
優羽の耳元で優しい声音で囁く。
今迄のように。
だが、その抱き締めた手を優羽は振り払い叫んだ。
その言葉を聞いた流は目をゆっくりと見開かれる。
優羽の叫んだ言葉は、今までの生活を一変させてしまうものだった————