こんな能力(ちから)なんていらなかった



 流は頭を掻きながらキッチンへと戻る。

 しかしふと足を止めると振り返る。


「昨日は……大丈夫だったか?」

「うん。 平気」


 優羽の顔を真っ直ぐに見た流は不自然な点が見当たらなかったのか、ならいいんだと笑った。




***



 今日は金曜日。

 いつもなら全員テンションが低い日だ。
 だが、今日は皆してやたらとテンションが高かった。

 理由は単純明解。


「千歳ー」


 テストが返ってくるからだ。


 呼ばれて席を立つ。


「このまま頑張るように」


 教卓からテストを手渡してくるのは古典の教師。不器用な笑顔を見せてくれたので微笑み返す。

 受け取り自分の席に戻って解答の確認をする。

 うん。まずまずの点数だ。

 納得のいく点数に一人満足し、大雑把に折ってノートの間に挟み込む。

 転校してから初めての定期試験だから、どうなるもんかと不安に思っていたが杞憂に終わりそうだ。

 周りをチラと見れば皆して点数を見せ合いキャイキャイしてる。


楽しそうでいいですねー。



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