『友人狩り』
玄関を出ると、家の前で郁哉が立っていた。

「おはよう。」

「うっす。」

郁哉は雫が隣まで来ると駅までの道を歩き出した。
2人とも何から話せばいいのかわからなかった。
ただ、今日もいつもと変わらない日常が始まると思っていたのに、起きたときから家族の様子が変だった。

「母さん、今から俺がどっか遠いところに行くような目で見て来るんだよ。」

静かに郁哉が隣で話してきた。
雫もさっき感じたことを郁哉に話した。

「学校に行ったらわかるかな?」

「多分、わかんじゃねぇ??」

その後、雫と郁哉はひと言も会話をしないまま駅に着いた。

「郁哉、雫。」

駅の改札口で航平が手を振りながら声をかけてきた。
航平も私服だった。

「なんか、1人で学校行くの心細くてさ、お前らが来るの待ってた。」

航平は雫と郁哉にそう言うとニカッと笑った。

「じゃぁ、一緒に行こう!!」

雫は郁哉と航平に会っても不安が消えたわけではなかった。
でも、学校が近づくにつれて不安が肥大してくることもなかった。


<これで優李がいたら、不安など消えたかも…。>

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