『友人狩り』
さわさわと風が木々を揺らしていく。

<本当に『友人狩り』など始まるのだろうか??>

郁哉は数歩後ろを歩く雫を見て思った。


―8時58分。


あと2分で始まる。

国王様の噂はときどき耳にすることがある。
確か、まだ22歳という若さで国王様という地位になったと聞いた。
5年前に国王様の父である前の国王様が亡くなった。
それから亡き父の1人息子である現在の国王様が引き継ぎ、それから日本大国は荒れていった。
22歳という若さゆえに自分の好きなことを優先にして、若者の住みよい国にしてしまったのだ。
何人犠牲者が出たことだろう。
国王様が君臨した頃は反発する大人たちもいたが、国王様に逆らったという罪で罰せられていく大人たちが次々に出てきた。
その中に死者が出てくることも多かった。
いつの間にか、この日本大国は国王様に逆らうことを止めていった。

そんな話を祖母から聞いたことを郁哉は思い出していた。


『郁哉、この国は終わりだね。生前の国王様は私たち民間人のことをいつも考えてくださった。でも、今の国王様はどうだね。自分が楽しかったら他はどうでもいいという考えをしている。私は思ったよ。もうすぐで日本大国も滅びると…。別に今の国王様が悪いわけではない。この国に住んでいる者の責任だよ。国は人で創られるものだからね。全て生前の国王様に甘えてきていた罰なのかね…。』

薄暗い病室でボソボソと小さい声で話す祖母は寂しげに天井を見ていた。

『郁哉、お前はこの国で生きていかねばならない。この荒れた国で…。』

祖母は郁哉に顔を向けた。
祖母の目には涙が溜まっており、その涙の意味が何を示しているのか郁哉にはわからなかった。
それから3日後に祖母は亡くなった。
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