オモイデバナシ
お化け屋敷は、アトラクションコーナーの真ん中辺りにあった。

ホラーハウス、という看板のついた、いかにもな感じの建物。

「こうちゃん達だけで大丈夫だろ」

千秋のお父さんは、ニヤニヤ笑いながら言う。

千秋やトモがベソかくのが見たいらしい。

意地悪なお父さん持って幸せだな、千秋にトモ。

入り口で入場料を払い、早速入ってみる。

「うわ…怖い…」

まだ入っただけなのに、何も出てこないうちからトモが怯えた声を出した。

「何だ、トモは怖がりだなー」

笑いながら俺が言う。

すると。

「……」

トモが俺の手を握る。

やれやれ、気が弱いんだから。

仕方なく、俺はしっかりと手を握り締めてやった。

…お化け屋敷は、案の定子供騙しなものだった。

あからさまに作り物と分かるような、ゾンビやガイコツやらが、室内のところどころに隠れている。

たまに突然の大音量と共に出てきてビクッとなるものもあったけど、その程度。

この春、高校生になろうっていう男子に悲鳴を上げさせるほどのものは、何一つなかった。

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