もしも私が―。
開けた視界に飛び込んできたのは、またしても化物の姿だった。

(ああ、見ちゃった)

 私は、心のどこかで悲しみ、心のどこかで歓喜した。
 化物から視線を逸らすと、化物の下に、男の子が体を引き裂かれて横たわっていた。

(う……!)

 私は思わず目を逸らし、口に手を当てた。
 気持ちが悪い。
 
 ふと、その子の前に女の人がいるのに気がついた。
 その人は、白衣姿で、金髪だった。日本人には到底見えない、グリーンの瞳と、白い肌を持っていた。
 その女の人は、あろうことか、化物に話しかけた。

「人間はね、欲の塊なの。『自由とゆう名のブツ』の『存在』を知ってしまえば、それが欲しくなってしまうでしょう?そうすると醜い化け物になってしまうの。だから、けして逃がしてはならないの。あなたのようにね」
 
 何を言ってるのか意味が分からなかったけど、女の人が不敵な笑みをこぼした時、私は胸が悪くなった。
 体の中の何かが、グルグル廻っているみたいに……。

 その瞬間、化物の鋭く尖った爪が、女の人の喉笛を掻き切った!
 血が辺りに飛び散る。
 私の顔と服にもついた。 

「キャ!やだ!」

 気持ち悪さと、怖さと同時に、怒りが湧き上がった。

(許せない!人を、こんなに簡単に殺すなんて!)

 私は怒りに身を任せて大声を出して、化物の方へ向って走り出した!

「うわあああ!」
 

 

 **********


 静かに目を開ける。
 夢から戻った私は、ゆっくりと体を起こした。

(やっぱり、血、ついてる。)

 少しぼおっとしている頭で、テレビのリモコンを取ってつける。
 すると

「先ほど入ったニュースです。えー、女性が路上で殺されているのが発見されました。遺体から死因は鋭い爪で喉を切られた、出血多量の即死です。なお、現場にはその女性とは別の血痕が混じっているようです。今、警察が――」

 途中で電源を切った。

(待って……男の子の死体が無かったてことは、食べられたってこと?)
 
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