もしも私が―。
 遊園地へ入り、ジェットコースター、メリーゴーランド、コーヒーカップ……。
 あんなに笑ったのは、久しぶりだった。

「次は何乗ろっか?」
「ねぇねぇ、あれ!観覧車のろうよ!」

「あいかわらず、友未は高い所好きなんだ?」
「うん!大好き!よッしゃ!早くならぼ!」

「うわあ~二十分待ちだって……」
 言いながら友未が私の方を見た。

「良いよ、待とう!」
「やったぁ~!」
 その可愛らしさに、思わず噴出してしまった。                            

「本当、変わってないねぇ!そうやって人の顔見るの」
「うう~笑うなよ!」

「ごめん、ごめん!ぷっ……!」
「笑うなってば!」

「ごめ~ん!たださ、変わってないなって思ってさ」
「圭子だって、変わってないよ?」

 その言葉に私の胸は痛んだ。
 だって、私は変わってしまったから……。
 
 友未がいなくなった後私は、ドンドン人生がつまらなくなって、誰もが、仮面をかぶっているように見えて、心が、腐って行くのがわかったから。

「……そう?」

 そう言うしかなかった。

「次の方、どうぞ」

 私達の番だ。観覧車に乗り込み、窓の外を眺める。友未は窓にへばり付いていた。

「ねえねえ!結構高くなって来たよ!」

「うん」

 私がそう答えると、友未は窓から放れて、こう言った。

「ごめんね」

「え?」                                

「ごめんね。私、もっと早くお姉さん達のこと知ってたら……。
 私、あんまりニュース見ない人だから、ごめんね?辛かったよね、圭子」
 
 涙目でそう言う。

「友未が謝ること無いよ。お葬式の通知だって、鹿児島から来るの大変だと思って出さなかったの私だし……」
 
 沈黙が流れる。それを断ち切ったのは私だった。

「あ~もう!やめよう?この話は、今日は無し!楽しもうよ?」

 そう言うと友未は涙を拭いて
「うん」と言って、笑ってくれた。

 きっと、友未だって辛かったんだろうな。
 友未は、自分が傷つけられるより、人が傷つけられる方が、ずっとイヤな子だから。

 前だって仔犬がいじめられてるの見て泣きながら止めに行ったし、相手は不良だったのに……勇気のある子だよね……私とは……正反対な子。

「あ!ねぇねぇ!圭子!観覧車降りたら、アイス食べようよ!今日はおごってあげる!」

「うん、本当におごってくれんの?」

「OK!バッチリおごっちゃいますよ~!っていっても、二百円ぐらいだけどね~」

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