同期が急に変わったら…。
『おはよう。』



今日も将生のいないオフィス。




今までだって、

将生が出張でいない事なんて

よくある事なのに。





よくある事なのに、

今は、居ない事が気になる。




『おはようございます。』



俊介の爽やかな笑顔が引き立つ。

癒されるよ〜。



『桐谷さん、
今日もこれ、お願いします。』



と、いつもの書類の束が

横からやってきた。




俊介〜、

あんたに癒されたのは、

一瞬だったわ。





いつもの笑顔で、


『はい、了解。』


『それ、
明日いっぱいで大丈夫です。
課長提出用なんで。』




と、不在の将生のデスクに向かって

親指をツンツンと向けた。




『そう?
じゃあ、ちょっと余裕があるわね。』


『はい。
課長、明後日戻られますよね?』


『そうね。』


『桐谷さん、寂しそうですね。』


『えっ?そう?』


『そうですよ?
自分では気がついてないでしょ?』


『気がつくって、何よ?』


『俺にはわかりますよ。』


『俊介、この書類、返す!』




今、受け取った書類を

グイグイと押し付けてやった。




『あー、すいません。』

『ほんとに。』





どういう事?

私、寂しそうに見える?

それは、まずいわ。





パソコンに向かいながら、

自分は寂しそうに見えるのかと、

それが、頭の中をぐるぐるしていた。





そう感じないように、

そう見えないように、

ずっと、上手くやってたのに。






将生が変だから、

バランス崩しちゃうでしょーが。

ホント、勘弁して。






はあ。

午後から東亜だし、

将生の書類を確認しよう。










『何、浮かない顔してんのよ?』

『あー、恵梨香。』




社食で一人昼食をとっていた私に

トレーを持った恵梨香が

声を掛けてきた。






恵梨香に


『座れば?』


と、隣の椅子を引いた。





私の横に座って、

私の顔を覗き込む恵梨香。




『なあに?どうしたのよ?』

『うん。ちょっとね。』

『将生でしょ?』




図星をつかれて、

目を見開いて固まった。




『……。』


『言ってみてよ。』


『うん…。私、寂しそう?』


『どうかな?』


『将生がいなくて
寂しそうだって言われた。』


『ふうん。バレちゃった?』


『わかんない。』




クスクス笑う恵梨香。

なに?

なんで、笑うのよ?




『まあね。

あんた、隠し通してたけど、
そろそろ限界なんじゃない?』


『限界かなあ。』


『う〜ん。だろうね。』


『もうヤダ。』


『拗ねるな。』





で、またクスクス笑って

黙々食べ始める恵梨香。





『最近、将生さあ、変なのよ。』


『変って?』


『う〜ん。
今まで言わなかったような事
サラッと言うのよ。』


『例えば?』


『お前には俺がいるだろ?的な?』


『アハハハ。
将生、そんな事言うの?』


『言う。ね?気持ち悪いでしょ?』


『見直した、将生!』


『え〜?なにそれ。』


『まあ、いいわ。ほら、食べなよ。』


『え〜、解決してない!』


『なるようになるわよ。』


『え〜。』





なによ。

全然解決しないじゃん。

恵梨香、まだ笑ってるよ。




もういいっ!




納得いかないけど

考えてもしょーがない。




食べよ。

ガッツリ食べて、午後から東亜だ。

エロオヤジと対戦だ。




仕事、頑張りますか!






< 19 / 52 >

この作品をシェア

pagetop