同期が急に変わったら…。
木曜日の朝。




『おはよう』



朝の無愛想な課長の挨拶。





紺の細身のスーツ。

青系統のネクタイを締めて、

姿勢良く、颯爽と歩く将生。





はいはい、

今日もステキですよ、課長。




デスクに向かう将生が

チラッと私を見て

一瞬、目があった。




はぁ、

こんな事にもときめいてしまった。

女子高生じゃあるまいし。

情けない…。






将生は、

なんでもないように

すぐにデスクに座り仕事を始める。







『いずみさん。ちょっといいですか?』

『うん。なあに?』




声を掛けてきたのは、

営業1課の2番目に若い瑠美ちゃん。

24歳。ピッチピチの女の子。





営業1課に3人いる女子の

もう一人は、新入社員の理沙ちゃん。






因みに、3番目は私。

っていうか、

一番年上なんだけどさ。





『これ、
前にいずみさんの担当だって聞いて。』


『あ〜、そうね。
ここは、担当者が変わってないかな。
一度、丸山さんにアポ取ってみたら?』


『わかりました。すいません。』


『全然。また、なんでも聞いて。』


『あの、じゃあ、
今日お昼一緒にいいですか?』


『いいわよ。じゃあ、またお昼にね。』





若くて可愛い瑠美ちゃん。

最近、営業に行き始めた。

頑張れ、瑠美ちゃん!






若いっていいなぁ、

とか、呑気に思ってたら、




『桐谷さん。』

『んー?』

『はい、お願いします。』




そう、俊介からのお仕事。




俊介が、ニッコリ笑いながら、

書類を横から手渡ししてくる。




今日はまだ少ないわね。




『いつまで?』

『明日、午前中で。』

『了解。』



今日も頑張りますよ。




カタカタカタカタ。

カタカタカタカタ。




もうお昼。

今日は、

久しぶりに瑠美ちゃんと

ランチだったわね。





『瑠美ちゃん、行こっか?』

『はい、行きますか?』




会社近くのおしゃれな

イタリアンレストラン。





ランチは、リーズナブルなのよね。






『瑠美ちゃん、営業は慣れた?』

『いえ、まだまだですよ。』



ちょっと顔をしかめて、

首を横に振っている。




そんな仕草さえ、

若さ故、可愛さ満載だ。




『私も初めはキツかったなあ。
でも、経験かな。
そんな初めから上手くできないわよ。』


『いずみさんもですか?』


『当たり前じゃない。
今だに勉強よ、私もまだまだ。』


『そうですか。
なんか、安心しました。』




後輩を励ましながら、

パスタを食べて、

お腹が満足してきた頃。





『あの。
いずみさんって、宮野さんの事
どう思ってますか?』


『えっ?俊介?
ん〜、どうって。次期エース?』




瑠美ちゃん、

突然どうしたの?



あら〜、もしかして?

と、思って、ニヤリとして見せたら。



瑠美ちゃんは苦笑いした。





『ねえ、瑠美ちゃん。
もしかして、俊介の事、好きなの?』


『……。』





瑠美ちゃんったら

なんだか、モジモジしちゃって

パスタのフォークを

クルクルしたまま、口に運ばない。



『瑠美ちゃん?』


『はい。私…。
宮野さんの事が好きなんです。』



顔をポッと紅く染めた。

パスタを食べる手が

完全に止まっている。






いんじゃない?

社内恋愛禁止じゃないし。

若いんだしね。




若くなくても

社内恋愛始めたカップルもいるし。

……私ですけど。



『あら、そうだったの。
ふふふっ。いいんじゃない?』


『はい…。でも…。
いずみさんと宮野さん、
仲がいいですよね?』


『は?あ〜そうねえ。
でも、それは仕事だしね。』


『そうでしょうか?』


『そうよ?
仕事の良きパートナーよ。
一応、息は合ってると思うけど。』


『そうですか。そうですよね?』


『フフっ。瑠美ちゃんかわいい。
応援してる。頑張って!』


『はいっ。
……じゃあ、私、頑張ります。』


『うん、攻めちゃえ。』


『はいっ。』





そっかあ。

そうなんだあ。

いいね〜、恋って。

ほんわかしてきたわ。




ランチを終えて、

季節は冬に向かってるのに

心はポカポカ陽気で

瑠美ちゃんとオフィスに戻った。
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