幼い頃の小さな約束
ゆきは、あっさりとあたしの意見を否定する。
そして、あたしの背中をグイグイ押した。
「早く行かなきゃ、木野君が大変なことになっちゃうよ?」
ゆきはにっこりと笑う。いつもの可愛い笑顔だった。
悲しさが滲んだ、寂しい笑顔だった。
あたしは亮太をおんぶした。軽い、コイツちゃんとご飯食べているのかな?
あたしは、ゆきの方へ振り向いた。
ゆきはあたし達を、じっと見つめる。
「ゆき、あたしの初恋を守ってくれて、ありがとう」
あたしはそう言って、保健室へ駆けていった。
ゆきの優しい嘘を、残して。