代償
携帯が、再度鳴る。
ソレが、呼び出しの電話ということは想定つく。
嫌々手に取り。

「………もしもし」
出た。
何で出るの?
出たくないんでしょ?
………何で。

『城時さん、オーダー、ヤバいですよ』
「………東か」
『上、偉くご立腹ですよ?………何があったんです?』
「………嫌だって………駄々こねた。もう、行きたくないんだ」
『………そんな』
「………もうな。………全部ボロボロなんだ。1日、何人相手にすると思ってる」
『………城時さん………』
「………今日は、行かない。明日、倍稼ぐし、奉仕する。………今日はいい」
『そんなっ城時………』

言い切って、通話ボタンを押す。
強制的に通話終了。
「………えげつねぇなぁ」
携帯を遠くに放り投げた。
電話がかかってきても、出ないということだろう。

「!」
腰に、腕が巻かれる。
………あ。
懐かしい。
なんて。
「………婆の香水の臭い、しねぇな」
………つけないって。
香水とか。
婆って。
「………」

温かい。
冷たい空気と対照的で。

電話が、鳴り出す。
またか。
上時は呟いて、顔を膝に突っ伏す。
聞きたくない電子音。
逃げるように、してる。

「………文香」
掠れた声。
私は、返事さえ出来ない。
声が、出ないんだ。
怖くて。
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