代償
「ま、潰すつもりなら、やればいい」
「潰す、とか………」
「下時は、前橋が責任持って潰してやる。首を洗っておけ」
「そんな………」
「面白いこと。教えてやろうか」


キャーラが、口角を上げ、笑う。


「総長な、もう後ろ楯がねぇんだよ」

後ろ楯が、ない?
「どういう………わけ?」
「前橋が責任持って、下時を潰したら」
「………」

「前橋組は、崩壊するんだよ」


もう、バラバラなんだよ。
うわべだけ。
薄い氷の上に、前橋組が成り立っているんだ。


ワレタラ、ドウナル?

「………沈む」
「ご名答。氷は薄い。すぐ、割れるさ。温めたら、なおさら」
温めたら?
何を………。

「楽しみだな。崩壊したあと。警察は大忙しさ」

治安体制が崩れるからな。
前橋組と。
一緒に。

一緒に、墓穴入りさ。

「最高だね。文ちゃん」

足から、力が一気に抜ける。
その場に座り込む。
目の前には、キャーラの足。

「こんな世の中だしね。前橋組が崩壊するのも」

時間の問題だよ。

そう、声が、降ってきた。
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