代償
総長、眠る。

吐血。

「─────────あ」

吐血音───。
遠く離れているのに。

───聞こえた気がする。
真っ赤な血が、湧き出るように吐き出される。
それでも。

上時は動く。
ナイフを抜き、奪った。
「───ふざ、」
動けないのに───。
麻賀族長に刃先を向け、

「けるなぁぁぁ!!!」
刃物─対─素手。
勝つ方は、決まってる。
圧倒的に、刃物のほうが有利。
素手は不利───。

血が。
舞った。


『下時と、前橋の相殺』
毒と解毒みたいな。
どっちも、消えるんだよ。


ふと、思い出した。
相殺───。
どっちも消えてなくなる。
この族───2つが、なくなる。
───そう、いう気らしい。

───相殺して消滅。
───2つの組。

今。
麻賀族長が倒れた。
右胸に深く刺さったナイフ。
再起不能。
誰が見ても、分かる。

「族────」



族長ーーーーーー!!!

弔い音のような、下時組の組員の声が。

高い空に吸い込まれていく。
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