代償
───上、

「………上時」
跪いて、傷を手で押さえる。
表情は見えない。

蹲るキャーラを気にかける。
傷を押さえない手で、キャーラの身体を揺さぶる。
下時組の組員を潰した前橋の組員が続々と集まる。
遠くから見ている。
ユートさんが、キャーラを背負う。
───怪我してるのに。
ユートさんも、足に怪我を負っている。
みんな、血を浴びて───。

「───あ」
上時が何かをユートに言う。
驚愕を顔に浮かべ、ユートさんは頭を横に振る。
組員も、みんな。
血を流す上時は───

笑ってる。
窶れて痩せて。
その顔で笑った。

「───」
組員は、泣く。
マスターが、上時を抱き締めた。
離して、
「───戻ろう」
言う。
組員が、帰っていく。
この場所から。
嫌がる組員を、押さえつけて戻る。
何度も、総長と叫んで。
手を伸ばして。
上時を求める。
総長、総長総長──────。
大粒の涙を落として。

この場合から去っていく。






上時は──────置き去りで。
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