代償

病室。

上時は、病院の病室にいる。


私は、下時組にいられなくなった。
途方にくれ、
『文香ちゃん、おいで』
と、凜音さんが拾ってくれた。
また。
拾われた。
………ははっ。

凜音さんの家にいる。
連絡のない携帯をずっと見て。
何があるの?
なにも、ない。


私。
妊娠、してるんだ。
誰の子か。
考える前に分かった。
───どちらにも。
不利な存在だよ。
あの時の吐き気。
悪阻、なんだって。
───私。
ほんと、何なんだろ。
存在価値、ないよ。

「………避妊、してよ」
今更、遅い。
おろせないし、………だからと言っても、産めない。

「文香ちゃん、どうするの?」
凜音さん。
この人だけに明かしている。
「上時総長のでしょう?」
「───」
「何せ、上時総長───」


あの時から、目、冷ましてないから。
約2ヶ月。
今は8月。
───2月も、起きない。
眠ったまま。
機械に取り巻かれて、眠ってる。
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