掌編小説集

540.石の意志を持ったセクシーな小悪魔は蛇蝎をLandscaping

「おつかれさま!」と彼にメールを送った。

1分経っても返信が無い。


「もしかしてまだ終わってないの?」ともう一度メールを送ってみた。

仕事が忙しいって言う彼の望み通りに、私から会いに行く為に。


「いつ終わるの?」

まだ彼からは返信が無い。


「もしもーし!」

前にSNSを更新してるのにも関わらず、私へのメールの返信を忘れてたことがあった。

うっかりだったって。


「おーい!」

寝る前に電話し忘れて寝てしまった時も。
私を騙して会社の飲み会に行ったことも。
仕事のことだって話してくれないことも。

全部ぜーんぶ許してあげたのに。


「無視なの?」

放置されるのは好きじゃないどころか大嫌い。
私は彼を愛してるからこそ彼に合わせようとしてるのに。
私ばっかり我慢して彼は何故私に合わせてくれないの。


「わざとスルーして焦らしてるの?」

二の矢三の矢を放つけど、SNSの更新も無ければ本命であるメールの返信も全く無い。


「なんで返信してくれないの?」

私を愛してるならいくら仕事が忙しくたってメールの返信ぐらい出来るよね。
ってゆーか、するべきでしょ。


「私のこと嫌いになったの?」

まさかまさか。
不安で不安で堪らない。
彼の口から愛してるって聞きたい。
目の前で抱き締めて納得させて。
私を満足させてよ。


「一体何をしてるの?」

彼の友達は全員把握してる。
だからもれなく連絡したけど誰も彼も知らないって言ってる。


私をこれだけ不安にさせておいて、友達にまで迷惑をかけるなんて。
彼の理不尽な自己中っぷりに怒りで倒れそうだわ。


「誰かと一緒にいるんでしょ?」

私に内緒で彼が誰かと会ってるなんて、恐怖心を煽って背筋を凍らせるだけの稚拙なホラー映画でしかない。


「誰と一緒にいるの?」

指し示してるのは私の知らない場所。
GPSじゃやっぱり駄目だったみたい。

私のモノだってことを重々認めさせて、
私を裏切ったことを後悔なんて生ぬるい。
謝罪と土下座とプレゼントだけじゃ気なんて済まないから。

私が監視してちゃんと彼を管理しなくちゃ。



「浮気は許さない」

絶対に許さない。


「今から行くから」

絶対に逃がさない。



ビードロには卯の花腐し。
忌みに意味など愚蒙だわ。

気位が高い私が被った鞠問の正解はたった一つしかない。
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