掌編小説集
733.アザレアでいいアザレアがいいアザレアでよかった
あの決死の決戦から時は流れて、洋菓子店を営むとある家族の元に返すために帰さなければならない人を車で送り届ける彼が居た。
社長の部下の手下の中でも選りすぐりの息子同然だからとして、綺麗事は言わないし守るためには厭わないと汚れ仕事を請け負っている。
家族が居なくて知らないけれど何よりも家族を求めていて、家族を守るために何でもしてきたし家族はそれに応えようともしてくれた。
けれども償えないならば顔を変えてでも何もかも変えて最期までやりきるだけと、彼は表舞台からも裏舞台からも存在を消されていたからこそ、今ここに存在出来ているのは皮肉ではなく幸運ということにしたい。
送り届けてその家族を陰からひっそり見届けた後車に戻れば、助手席に座っている彼女は社長の元秘書で社長には有能だと重宝されていた。
今は居場所が無い人達の居場所である彼が組織に居た頃に、汚いお金で立ち上げた綺麗な会社で、社長は彼ではないけれども比較的彼の専属秘書兼社内の何でも屋だ。
彼女の手には待っている間にその洋菓子店で買ったケーキがあって、その人が差し入れにと持ってきてくれていたケーキで、会社に居た彼女にとっても思い出の味だ。
嬉しそうにケーキの話をする彼女に彼は少し不満気で、俺の作ったケーキには文句を言っていたくせにと文句をたれる。
塩と砂糖を間違えたらそりゃ言いますよ、それにその後一緒に作ってあの子達には美味しいって言ってもらえたんですし、今はちゃんと一人で作れるんですから良いじゃないですか。
っていうか何年前の話を持ち出しているんですか?しつこい男は嫌われますよと彼女に直接言われると、ウッと言葉に詰まりハンドルを握る手に少し力が籠る。
いくら売っているものでも他人の男が作った、しかも見ず知らずのではなくあの男が作ったケーキを、こんなに嬉しそうに言われたら自分の不甲斐なさも相まって面白くない。
けれどそんなみみっちいことを言って嫌われたくない彼は誤魔化すように話題を変えて、そっちこそいつまで経っても敬語のままじゃないかと矛先を彼女に向ける。
秘書だから当然ですとドヤる彼女に今はプライベートだけどとしたり顔で言えば、あ~分かった分かった分かったから早く帰って食べよう。
全然分かっていないと思ったけれどこれでも時間は限られているし、箱の大きさからして二人分だから帰ったところで恨めしい視線を向けられるだけ。
そういうところは何故か抜けているんだからと変わらないところに安堵して、邪魔されずに二人っきりで食べられるところを思い浮かべる。
二人の時にだけ彼女が呼ぶ彼の昔の名前に籠もっている感情を、彼と彼女が理解出来るのもすぐのことで、あの頃を知っている人達との秘密は何よりも大切な想いである。
社長の部下の手下の中でも選りすぐりの息子同然だからとして、綺麗事は言わないし守るためには厭わないと汚れ仕事を請け負っている。
家族が居なくて知らないけれど何よりも家族を求めていて、家族を守るために何でもしてきたし家族はそれに応えようともしてくれた。
けれども償えないならば顔を変えてでも何もかも変えて最期までやりきるだけと、彼は表舞台からも裏舞台からも存在を消されていたからこそ、今ここに存在出来ているのは皮肉ではなく幸運ということにしたい。
送り届けてその家族を陰からひっそり見届けた後車に戻れば、助手席に座っている彼女は社長の元秘書で社長には有能だと重宝されていた。
今は居場所が無い人達の居場所である彼が組織に居た頃に、汚いお金で立ち上げた綺麗な会社で、社長は彼ではないけれども比較的彼の専属秘書兼社内の何でも屋だ。
彼女の手には待っている間にその洋菓子店で買ったケーキがあって、その人が差し入れにと持ってきてくれていたケーキで、会社に居た彼女にとっても思い出の味だ。
嬉しそうにケーキの話をする彼女に彼は少し不満気で、俺の作ったケーキには文句を言っていたくせにと文句をたれる。
塩と砂糖を間違えたらそりゃ言いますよ、それにその後一緒に作ってあの子達には美味しいって言ってもらえたんですし、今はちゃんと一人で作れるんですから良いじゃないですか。
っていうか何年前の話を持ち出しているんですか?しつこい男は嫌われますよと彼女に直接言われると、ウッと言葉に詰まりハンドルを握る手に少し力が籠る。
いくら売っているものでも他人の男が作った、しかも見ず知らずのではなくあの男が作ったケーキを、こんなに嬉しそうに言われたら自分の不甲斐なさも相まって面白くない。
けれどそんなみみっちいことを言って嫌われたくない彼は誤魔化すように話題を変えて、そっちこそいつまで経っても敬語のままじゃないかと矛先を彼女に向ける。
秘書だから当然ですとドヤる彼女に今はプライベートだけどとしたり顔で言えば、あ~分かった分かった分かったから早く帰って食べよう。
全然分かっていないと思ったけれどこれでも時間は限られているし、箱の大きさからして二人分だから帰ったところで恨めしい視線を向けられるだけ。
そういうところは何故か抜けているんだからと変わらないところに安堵して、邪魔されずに二人っきりで食べられるところを思い浮かべる。
二人の時にだけ彼女が呼ぶ彼の昔の名前に籠もっている感情を、彼と彼女が理解出来るのもすぐのことで、あの頃を知っている人達との秘密は何よりも大切な想いである。