煙草とキス
あたしは、受け取ったケータイを握りながら快斗を見た。
「……快斗?」
そう呟くと、
快斗はまた目線を落として、口を開いた。
「メイとのこと、聞いただろ?
……俺はあの頃、本気になってた」
静かに話し始めた快斗。
あたしは、快斗の表情を見つめながら軽く唇を噛み締める。
「なんつーか、ガキだったから尚更、メイにはまってったんだよな」
快斗はそう言いながら、さりげなく苦笑する。
あたしも、苦笑した。
「けど今更、メイが俺の前に現れたって俺は何も思わない。つーか、思いたくもない」
「えっ?」
「俺は、お前しか知らねぇから」
快斗が、あたしの目を見つめた。
スタジオのドアに、手をかけた。
開かれたドアの向こうからは
何の音もしなくて。
鈍く閉じたドアの音だけが、あたしの耳に届いた。