煙草とキス
────人の過去に、踏み込む。
あたしは、そんな真似をしたくない。
自分だって、嫌だから。
だけどあたしは
それと似たようなことを、してしまっているのかもしれない。
心の中で思っていることと、していることが矛盾しているのかもしれない。
それでもあたしは
メイの気持ちが知りたかった……。
それからしばらくして
あたしは、始発の電車で家に帰った。
真っ先に向かったのは、ベッド。
そこに勢いよく倒れ込むと、ふわりと快斗の煙草の匂いがした。
おかしいのかもしれないけど
あたしはこの煙草の匂いが大好きで、すごく気分が落ち着く。
さっきまでは、メイと快斗とのことで気が気でなかったけれど……。
窓の外に見える朝焼け。
快斗の煙草の匂い。
あたしは、もうすぐに昇るであろう太陽の光を見つめながら
少しずつ、息を吐いた。