煙草とキス
──「……いっ…澪っ……澪!」
仕切りに名前を呼ばれて
あたしは、唸りながら目を開けた。
すると
「…えっ……え!?」
目の前には、何故か満面の笑みを浮かべる快斗の姿が。
あたしはそれを見て、ゆっくりと体を起こした。
「あれっ?快斗、夜に帰るってメール…」
「いや、もう夜なんだけど」
「えっ……嘘!」
快斗にそう言われ、
慌てて時計を見ると時刻は夜7時。
窓の外も、いつの間にか薄暗い。
「澪のことだから、どうせ帰っても寝てると思った」
快斗は、指にはめたリングを抜きながら笑った。
そして、ポケットから煙草を取り出し、ライターの火をちらつかせた。
「まあ、そんなことは
どうでもいいんだけどさぁ…」
フーッと煙を吐いた快斗は
まだ1、2回しか吸っていない煙草を、灰皿の上に置いた。