煙草とキス




──「……いっ…澪っ……澪!」






仕切りに名前を呼ばれて



あたしは、唸りながら目を開けた。






すると



「…えっ……え!?」





目の前には、何故か満面の笑みを浮かべる快斗の姿が。



あたしはそれを見て、ゆっくりと体を起こした。





「あれっ?快斗、夜に帰るってメール…」



「いや、もう夜なんだけど」




「えっ……嘘!」





快斗にそう言われ、


慌てて時計を見ると時刻は夜7時。




窓の外も、いつの間にか薄暗い。






「澪のことだから、どうせ帰っても寝てると思った」




快斗は、指にはめたリングを抜きながら笑った。



そして、ポケットから煙草を取り出し、ライターの火をちらつかせた。






「まあ、そんなことは
どうでもいいんだけどさぁ…」




フーッと煙を吐いた快斗は



まだ1、2回しか吸っていない煙草を、灰皿の上に置いた。







< 116 / 280 >

この作品をシェア

pagetop