煙草とキス
東京に居ると思うと
なぜか落ち着く自分がいた。
「え……。今?」
「時間があるなら、ぜひ」
電話の相手に聞こえないように、小さなため息をつく。
ふと電光掲示板を見上げると
まだお昼過ぎだった。
「どうしても渡したいものがあって…。3時からまたライブ入っちゃうから」
「……そっか…」
肩に掛けたボストンバッグがずるりと落ちそうになって、あたしはケータイから耳を離した。
危うく電話を切るところだった。
「じゃあ……今から行く」
そう言うと、電話の相手は「ありがと」と嬉しそうに言った。
「それじゃ」
電話を切ったあと
あたしは深いため息をついた。
やっぱりダメだ……
美季ちゃんが、結と何故か重なる。
声を聞くだけで息苦しかった。