煙草とキス
「澪、風邪引いた?」
どんよりとした曇りの朝、
シンクに寄りかかりながら水を飲むあたしに、快斗が言った。
「雨に当たったからかな…」
「なんで?」
あたしがそう呟くと、
快斗は煙草に火を着けて、あたしを見た。
快斗は、ここ5日も帰って来なかった。
今夜あるタイバンの、スタジオ練習が続けて入ったりしていたそうで
龍也の住むマンションに、泊まり込んでいたらしい。
いつも練習しているスタジオには近いし
龍也の住むマンションは、完全防音室が1つあって
夜遅くまで、楽器を鳴らすことが出来る。
だから、いつも連日帰って来なくても
居場所が把握できるから、余計な心配はしていなかった。
「月曜のバイト帰りにさ、世那のCDショップに行ったの。
そしたら、晴れてたのに急に雨降ってきちゃって」
ソファにドスン、と勢いよく座りながら
あたしは快斗に話した。