煙草とキス
すると、快斗は何も言わないで
あたしの唇にキスをした。
その瞬間……
ふわっ、と快斗の煙草の匂いがした。
最近、快斗は煙草を変えた。
コーヒーの香りが漂う
Wild Card.─────
『外国のが好きだ』とかなんとか言って
親戚の煙草屋から、定価より安値で買いつけて来たのだ。
それからどうも、
その煙草の、愛好者になってしまったらしい。
「………快斗…」
冷たい壁に、あたしの体が寄せられる。
快斗とのキスは、
どんどん深くなっていって
快斗の肩にあったギターは、床に静かに置かれていた。
ただただ、がむしゃらに互いの愛を、求め合っているわけじゃない。
意味もなく、むさぼり合っているわけじゃない。
だけど、たまに分からなくなる。
そんな自分が、嫌になる。
何故かすごく、不安になる。
快斗が何度か見せる
氷のような眼差しが、あたしの凍った心とぶつかって
鈍い音を出して、砕けている気がした。
そして、ふと耳を傾ければ
あたしの吐息が漏れる音と
静かに降り注ぐ、雨の音が部屋中に広がっていた。