煙草とキス
「…げっ! 人すごくない?」
「ホントだ…。前は危険ですかね?」
ホールへ入ると
小さな会場いっぱいに人が詰まっていた。
それでも通路にはまだまだ人が居て
みんな隙間を見付けては、無理矢理入り込んでいた。
「せっかくなら前に行きたいよね?」
「もちろんですよ~」
あたしがそう答えると
ひかりさんは小声で「よしっ」と言った。
すると突然……
ひかりさんが、あたしの腕をガシッと掴んで、ぐいぐいと引っ張りだした。
前列に行くために、人ごみを無理矢理掻き分けていく。
まあ、ライブでのマナーもあるけど
こういうことは、よくされるし、よくすることだ。
「ひかりさん、結構積極的ですね」
「まあね。こうでもしないと、よく見れないじゃん?」
少しだけあった空間に、2人で入り込む。
そこはちょうど センターあたりで
一列目ではないけれど、
ステージが、すごく近く感じた。