煙草とキス






「………えっ、どういうことですか?」








東京の梅雨明けが発表された日───。





あたしは、耳を疑うような……



かなり、ショッキングな知らせを発表された。








「だから、ひかりちゃん、昨日付けで辞めちゃったんだよ」





何度も何度も聞き返すあたしに、店長は呆れながらまた繰り返し言った。








でも、これは聞き返すのもあたりまえだ。









だって、この前のライブ後は




いつもみたいに、シフトを確認し合って





いつもみたいに、軽く別れたのに………









まさか、それが



ひかりさんの最後の姿だったと?





そんなの、冗談くらいにして欲しい。







「でも……あたし、何も聞いて…」




「僕だって、昨日突然言われたんだよ。
ひかりちゃんは、接客も上手いから……説得もしたんだけどね」




「そんな………」







ひかりさん、辞めるなんて




あたしはともかく………





店長にでさえ、一言も言ってなかった。








そんな雰囲気すら、一切無かったし




この仕事だって、楽しそうにやってたし。







なのに、何故急に辞めたのだろう?







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