煙草とキス


────「椎名さん……大丈夫?」





十数分は経った頃だろうか。




気持ちを落ち着かせて、静かにスタッフルームから出ると



もうとっくに開店していたらしく


お客さんが、ちらほらと見えた。







「大丈夫…」



あたしが微笑むと、先程の彼女は、目を細めた。




「そう。なら、良かった」




彼女はただそう言って


ササッとレジで会計をし始めた。





「ありがとね……」



あたしはポツリと呟き、彼女を見た。




せかせかと接客するのを横目で見ながら、服をたたんでいると







ポケットの中で



あたしのケータイが震えた。






側にいた店長に軽く睨まれ、あたしは頭を下げて電源を切った。








けれど、電源を切ったあとに




あたしは、動揺した。








ディスプレイには………












【 メイ 】と表示されていたから。










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