優しい君に恋をして【完】




よかった......



私が大きく頷くと、私の頭に手を置き、




「もう  家に戻りな」と、


私をあやすかのように、ポンポンと撫でた。




私は、頭に手が乗っかったまま、ブンブンと首を振った。





「お母さんが 心配するだろ」


私はまた首を振った。


だって、今日はずっと一緒にいられるはずだったのに、



まだ午前中なのに、もうバイバイなんて......




「まだ、一緒にいたい」





優は、ずっと私の頭を撫でていた。



「今日は もう戻りな



また明日 会いに来るから




毎日 お母さんに 挨拶するよ




許してもらえるまで 続けるから」







お母さんに......




「お母さんのことは、ほっといていいよ。


いつ許すかもわかんないのに......」



優は頭を撫でながら、優しく微笑んだ。





「大切な人に 反対されて付き合うのは



苦しいだろ?


あすかに そんな想いをさせてしまって



俺も 苦しいから




ごめんな......あすか」



優のせいじゃない、優のせいじゃないのに......



私はまたぶんぶんと首を振った。



「時間がかかるかもしれないけど




俺  頑張るから




だから もう戻りな




玄関に入るまで ここで見送るから」






私の頭からそっと手を離すと、


私から一歩下がった。




「また明日も来てくれる?」




優は私の言葉に深く頷いた。





「毎日会える?」




また頷いた。




「メールもいっぱいしてもいい?」



優は笑って、何度も頷いた。




「じゃあ.....もどるね」


また深く頷く優を残して、


ゆっくりと、門の中に入り、


玄関の扉の前で振り向いた。




「大好きだからね」




手話もつけてそう言うと、



優はまた人差し指と親指を2回くっつけた。




私は頷くと、玄関の扉を開け、



優の顔をじっと見つめながら扉を閉めた。


扉を閉めると、


ダッシュで自分の部屋へと階段を上り、



部屋の窓を勢い良く開け、ベランダに出た。


そして、下を覗き込むと、


まだ優が立っているのが見えた。




優は玄関を見つめてしばらくそのまま立ち尽くしていた。



優に気づいて欲しくて、手を振ろうとした時、


優は自転車の方へと歩き出し、



カタンと自転車のスタンドを外した。





「優......」



呼んでも気づかないことはわかっていたけど、

呼ばずにはいられなかった。






「優ーー!!!」





優は私に気づくことなく、




そのまま自転車に乗って、走り出し、



角を曲がって見えなくなった。









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